今回も前回に引き続き消費者問題のお話です。
具体例は山ほどありますが、失敗学によると
話し手本人の失敗談が危機管理に最も効果的である
ということなので、私自身の苦い経験をお話しします。
■ケース1
「パン1斤無料プレゼント!」
郵便受けに入っていたチラシ。パン以外にも卵やうどんがタダ同然で手に入るとあります。一見するとスーパーの新装開店のようですが、明らかに、SF商法です。
朝、会場に着くと、おじいさんおばあさんばかり3、40人が行列をなしており、若者は私だけでした。
10人くらいずつ建物の中へ案内されると、カセットデッキから
大音量でユーロビートが流れており、全員が中に入るとスタッフが音楽を一時停止します。
すると、壇上でマイクを持った男性が「自然食品」「無料」「明日も営業する」ということを訴えます。いつパンがもらえるのか段々不安になってきたところへ再び大音量のユーロビート。
建物の外へ誘導されスタッフからパン1斤を受け取り初日は終了
しました。
結局、パンがまずかったので、2日目以降は行きませんでしたが、
もし行っていたら高価な商品を買ってしまったかもしれません。
しばらく後に建物の前を通ると、もう看板も商品もスタッフもない
空っぽの状態になっていました。
私自身、何故その会場に足を運んでしまったのか今となってはもう
思い出せません。
■ケース2
「救援物資を被災地へ!」
インターネット上で被災地支援を呼びかけるサイト。正当なものもあれば、募金詐欺のようなものもあります。
平成23年3月11日、東日本大震災が発生し、日本中が何とかして被災地を助けたいという気持ちに駆られたことと思います。
私も、震災直後、「被災地」「支援」というキーワードで見つけたサイトから米、水などの生活必需品を被災地に送れると知り、早速購入ボタンを押しました。送付先を県知事宛てにするようサイト
には指示がありました。
ところが、後からまた別のサイトで
「運送会社もストップしているのにどうやって現地まで運ぶのか」
「支援が組織化されていない現時点では物資よりも募金の方が
望ましい」
という意見を読み、すぐに注文をキャンセルしてしまいました。
この場合、よく考えると、注文のキャンセルもできたのだし、
通販サイトへの誘導自体は違法ではないので募金詐欺と
即断するのは間違っているのですが、そのサイト宛てに送るので
あればともかく、県知事宛てに各自がバラバラに物資を送っても
通常業務の邪魔になり善意の無駄遣いになっていたことでしょう。
もっとも、注文のキャンセルができなかったとしても、契約当事者ではない誘導サイトが販売店から利益を受けていない限り、やはり募金詐欺とは言えないと思われます。
もちろん、偽物の通販サイトへ誘導しクレジットカード番号を入力させたり、注文した商品が被災地に届かないような場合は販売店も事情を知っているでしょうから、第三者詐欺(民法第96条第2項)と言えるでしょう。
■ケース3
「かわいいヒヨコ売ります」
おまけです。私が小学生の頃、
ポン菓子屋やらヒヨコ屋やらが
小学校の正門前で帰宅する子供
たちを待ち構えていました。
これは竿竹商法の一種と考えられます。
ある日、小学校の正門前に人だかりができており、見ると、ヒヨコがピヨピヨ騒いでおり、黄色くふわふわしたヒヨコは可愛らしく、いっぺんに欲しくなりました。
一目散に帰宅してヒヨコを買うと宣言し、お金を持って学校に
戻り、2羽連れて帰りました。それほど高い値段ではなかったと
思います。
ヒヨコは病気にもならず、数か月は一緒に過ごしましたが、
ニワトリに近い形に成長した頃、行方不明になってしまいました。
今でも外国旅行に行くと犬を売りつけられそうになったりして、
ペットの移動販売は万国共通なのだなと思うことがあります。
また、移動販売は正規のペットショップに比べて店員に売る気が
感じられず、よほど商品に自信があるのか、在庫を抱えない方法があるのか謎に包まれています。
以上、3つのケースを紹介しましたが、いずれも
「買い物の場所が常設の店舗ではない」
「買い物の期間が限定されている」
「買い物の意欲が衝動的、非日常的である」
という共通点があります。
買い物に対して慎重になりすぎるのも考えものですが、
「それは、本当に今すぐ欲しいものなのか?」
と一度立ち止まることが悪徳商法対策には有効です。
ここで、私がいわゆる「カモリスト」に載っているのではないかと
心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、
単なる偶然のようです。
他にも、珍味売り、ワンクリック詐欺など、様々な悪徳商法に
引っかかりそうになったり引っかかったりしてきましたが、
個人情報を相手に教えたわけではないので、このブログを読まない限り、この先、各業者が裏でつながる可能性はないでしょう。
もっとも、これ以上お話しすると、体験談商法との誤解を招きかねないのでこのあたりで終わりにします。
【参照】
◆「失敗学のすすめ」 畑村洋太郎 講談社
画像をクリックすると書籍ページへジャンプします